人の手が紡ぎ出す奇跡のスカーフ

150年もの長い歴史を持つ「横浜手捺染(てなっせん)」。薄地への美しいプリントを可能にした、世界に誇る技術のひとつです。「手捺染」という文字通り、手作業で一枚ずつ布を染め上げていきます。その繊細ではっきりとしたライン、スカーフの裏側まで到達する美しく深みのある発色は、デジタルプリントでは再現できない特別な魅力であり、同時に、ドットワイが横浜手捺染にこだわる理由でもあります。

そんな、世界すらも虜にできる技術でありながら、その工場は決して多くありません。あらゆる分野で機械化が進むこの時代、職人たちも一人、また一人と姿を消しているのが現状です。それでも、ドットワイ(.Y)は“本物の横浜製”にこだわり、現在も、希少な横浜の工房でスカーフを作り続けています。

職人たちの手から手へと渡り、徐々に形になっていくスカーフ。彼らは、自らの技術と思いを込め、着実に次の工程に繋いでいきます。そうして生まれる、唯一無二の美しさを知っているのです。こうしてスカーフも、歴史も、紡いできたのだから。

ドットワイの美しい世界と、優れた職人たちが出会い、一枚のスカーフが誕生するまでの奇跡の舞台裏をお届けします。

デザイン

横浜手捺染について - デザイン

トレース→感光現像処理→試し刷り→手捻染→蒸し、洗い、乾燥→裁断→縫製。作業工程のほぼすべてが、横浜の職人さんの手作業によって行われています。特に手捺染の工程は手間がかかる上に体力を使う大変な作業ですが、それだからこそ機械製造とは違った絶妙な風合いを生み出せるのです。現在、捻染技術を継承する職人はごく僅かしか存在していません。

トレース・製版

横浜手捺染について - トレース・製版

デザイナーが生み出したデザインをもとに、「版」と呼ばれる型を作ります。この版を通して刷ることで、スカーフの柄が描かれていくのです。
広く大きな面から、細く繊細なラインまで、表情豊かなデザインを実現する「版」。わずかでも歪みや汚れがあったり、前の染料が残っていたりすると、捺染時の失敗の原因になってしまいます。そのため、使用前に必ず洗い、入念なチェックを行い、常に完璧な状態を保たねばなりません。

また、手捺染では、一色ごとに版を変えるため、使われる色の数だけ版が必要です。色数が多ければ多いほど、手間もコストも跳ね上がります。

染料づくり

横浜手捺染について - 染料づくり

色鮮やかなスカーフの要となる、染料。デザインを忠実に再現するためにも、色の調整は重要な工程です。そしてもちろん、その工程を行うのは、人。機械に頼らず、職人たちが自らの目で確かめながら色を調整していきます。スカーフに使われているほとんどの色は、いくつもの染料を混ぜ合わせて作られており、その調合の精度は、職人たちの長年にわたる経験の蓄積を感じさせます。

捺染

横浜手捺染について - 捺染1

型と染料の準備が出来たら、いよいよ捺染です。
まずは下準備として、捺染室の温度と湿度の調整と、生地の地張り、そして型合わせを行います。

地張り、というのは、まっさらな生地を、捺染用の板に張り付けることです。刷っている最中に生地が動かないようにのりで固定します。この時に少しでも生地に歪みがあると、完成したスカーフの柄も歪んでしまうため、人の目でじっくりと探し、確実に修正していきます。

そして、型合わせ。正確に刷るために、版の間隔を決めます。ここで少しでもずれてしまうと、この後刷る際に全てがずれていってしまうため、念入りに調整します。また、金属のレーンは、温度で膨張したり歪んでしまうため、こちらも常に温度調整を行いながら、一定の温度を保って作業しています。

さて、ここまで来たら、いよいよ色をのせていきます。

横浜手捺染について - 捺染2

版を置いて、専用のゴムベラを使用し染料を押し付けながら上から下へと下ろします。この時、力の込め具合や、刷る際の動きの速度にむらがあると、うまく色が出ません。力を入れすぎても抜きすぎてもいけない、速度が速すぎても遅すぎてもいけない、経験に基づく絶妙な速度と力加減で、刷っていきます。
これを、片道25m、つまり往復50mの中で何度も繰り返します。90×90cmのスカーフであれば、片道25枚、往復で50枚分刷ります。そして、忘れてはいけないのが、これは一色分、ということ。色を一色ずつ重ねる捺染の特性上、8色のスカーフであれば全部で400回刷っているということです。これだけ時間をかけ、集中しながら手を動かし続けて、ようやく50枚分のスカーフができあがるのです。職人たちの根気強さと精神力も問われます。

検品・修正

横浜手捺染について - 検品・修正

捺染を終えると、今度は検品と修正を行います。
印刷のずれやにじみ、かすれたり、色が上手く出なかったりした場所などを、目視で見つけ出し、修正します。目視なんて、見逃してしまいそう…と思うかもしれませんが、熟練の職人たちの目は、どんなに小さなミスも見逃しません。培ってきた経験と直感で、高精度の検品を実現しています。

蒸し

横浜手捺染について - 蒸し

約100度に熱された大きな蒸し窯で、1時間しっかり蒸します。蒸しすぎると色味が変わってしまい、かといって蒸し足りないと色が定着しないため、正確さが問われます。

水洗い・巾出し・縫製

横浜手捺染について - 水洗い・巾出し・縫製

この後、水洗いをしてのりを落とし、スカーフの形として切り出して、縁を縫い上げれば、ようやくスカーフの完成です。

横浜手捺染について - 完成

このように、一枚のスカーフが出来上がるのに、多くの人の時間と手間、気の遠くなるような集中力が注ぎ込まれているのです。
職人たちの技術と思いの結晶である、ドットワイのスカーフを、ぜひお手に取ってお楽しみください。